タイ人と分かりやすく働くためには、まずタイ人が仕事や企業組織をどう見ているのか検討する必要があると思います。
タイ人にとって「仕事」とは、生活の糧を得るために仕方なく行う行為や家族の生活面倒の義務があるという意味をしています。同時に日本人が「仕事生きがい」や「仕事の中での自己開発」の考え方を持っています。しかし、タイ人にその考え方を頑張って提唱しても、あまり容易に受け入れられないでしょう。それについてどう考えたことはありますか?
タイの職場・企業観を理解する上で鍵となる概念は、「三つのS」である。つまり、サバーイ(Sabai)、サヌック(Sanuk)、サドゥワック(Saduak)である。「サバーイ」とは、心が穏やか、心身ともに健やかで気疲れしない意味です。「サヌック」とは、心がうきうきするし、楽しいという意味です。「サドゥワック」とは、便利、肉体的な負担や苦労を軽減するという意味です。
そこで、タイ人にとって望ましい職場とは、高い給料に加えて昇進が速いことも大切ですが、何より「気楽に仕事ができる」(タムガーンサバーイ)世界です。仕事がサバーイというのは、自分の能力が発揮できるとか、仕事が面白い(サヌック)という意味ではないです。むしろ、職場の人間関係が良い、家族的な雰囲気がある、上司の管理が厳しくないという環境を指します。ところが、5時を過ぎると、タイ人の価値観はたちまちのうちに「サバーイ」から「サヌック」の世界に移行します。食事であれ飲み会であれカラオケであれ、仲間同士でわいわい騒ぐのが大好きです。タイ人は、日本人のような飲み会の席で仕事についての話をたがりません。「サヌック」の世界がなくなったからです。
仕事の段取りを決めていくのは、「サドゥワック」かどうかの判断です。但し、この基準は日本とは少し違うところがあります。つまり、生産の効率性を改善するために生産ラインの変更を考えてみましょう。効率性の向上は会社全体の収益を増大させ、ひいては従業員の賃金の上昇につながると説明しても、なかなか理解を受け入れるのは難しいです。現場の作業者や技能者にとって生産ラインの変更が「サドゥワック」かどうか、すなわち彼らの仕事の負担、苦労、障害などの軽減につながるかどうかこそが重要な関心事だからです。
もっとも、タイ人の仕事観や企業での行動基準は、工業化が進み、国内での企業間競争が強まる中で、急速に変わりつつあります。厳格な人事査定による能力主義の管理システムも導入されつつあります。そこで、「自由で気楽な職場」は「競争と管理の職場」に変わり、タイ人の考える仕事観・企業観は、「3Sの世界」から「3Kの世界」へと変わりつつあります。「3Kの世界」とは、会社主義、競争、管理(Kaishashugi, Kyousou, Kanri)を意味しています。
タイ人は自発性がない、チームワークを嫌う、時間にルーズなどの不満は日本人からよく聞きます。ところが、会社全体の大事な式典や活動がある時に彼らの従業員の準備行動はどうだと思ったことがありますか。自発的に創造性なアイデアを出し、役割分担を自主的にきっちり決め、チームワークの力で出来上がっているということがよく見えるでしょう。なぜ、この力が通常の仕事に向かわないのかを考えたことがある日本人がいるでしょう。個人的意見で、タイ人の「仕事」に対する会社の動機づけやインセンティブが、タイ人の仕事における価値観と嚙み合っていないかもしれないでしょう。